抜海駅存続

 「最北の秘境駅」として知られるJR宗谷線の抜海駅(稚内市)について、JR北海道が示した廃止方針を受け入れる意向だった稚内市は11日、地元町内会への報告会を開き、2023年度は市費負担で存続させると伝えた。自治体が住民の反発を受け、駅の廃止方針を見直すのは異例。
 24年度以降の存廃は未定だが、市は年内に乗り合いタクシーやスクールバスなど代替交通の実証実験を行い、23年5月ごろに判断するとの事だ。
 抜海駅を巡ってはJR北海道が2019年12月、利用者の減少を理由に廃止方針を提示。市は21年度から、除雪費を中心に年間約100万円を支出して駅を維持してきたが、今年6月、工藤広市長が今後も利用者の増加が見込めないとして、市費負担での維持を本年度限りで終了する方針を表明した。
 説明会で、工藤市長は「これ以上、話しても(平行線のままで)時間がかかるだけ」と述べ、住民は強く反発。町内会はクラウドファンディング(CF)で維持費を集める計画を打ち出した。しかし、JRによると駅は自治体管理が原則で、民間が維持管理することはできないため、市は方針を転換した。
 抜海駅は1924年大正13年)に開業。最北の無人、木造駅舎として映画のロケにも活用され、全国から鉄道ファンが訪れている。