下川町の手延べうどん

 はるお製麺代表の丹野晴男さん(78)と長男の重男さん(49)は、生地作りに取りかかり、原料の小麦粉、食塩、水をこねてひと塊にした後、機械で圧力を加える。
 できた生地は帯状にして数本組み合わせて1本にする工程を繰り返し、細くしていきその後、機械で麺を2本の棒に八の字に掛ける。その幅は15センチ。麺の様子を見ながら少しずつ引き延ばしていき、「はた」と呼ばれる道具に掛けて熟成させながら1.2メートルまで延ばして乾燥させ途中、麺同士がくっつかないように箸で分ける作業もあり。1日半かけて乾燥させ、裁断した麺を袋詰めして完成。
 同店は2008年の開店当初から下川のうどんを提供している。 町内には下川の手延べうどんをメニューとして提供する飲食店が少なくとも3店あり、それぞれ個性的な味を競っている。町民に地元の味として愛されてきているほか、夏を中心に町外からもうどん好きが集う。
 下川町の手延べうどんの歴史は、半世紀前にさかのぼり。もともと町内には道内製麺大手の菊水(江別市)の前身に当たる杉野製粉製麺所があった。町内で米穀店を営んでいた倉本博さんは、この製麺工場にヒントを得て冬の農閑期の仕事にしようと考え、1972年に手延べうどん製麺工場を開業しました。製麺技術は、「揖保乃糸(いぼのいと)」で知られる兵庫県へ出向き習得。80年に菊水の工場が焼失し町外に移転すると、町に残った従業員2人が倉本さんから技術を学び、製麺所を開設したのだ。
 町内では1983年に地域経済を支えていた下川鉱山が休山し、ピーク時に約1万5千人いた人口が急激に減っていました。危機感を抱いた町は、休山に伴う雇用対策として職業訓練校と連携して手延べ麺の技術普及に着手。これにより製麺所が増え、90年代には10軒以上が操業していた。
 町内の商工観光関係者も地元特産品のPRに力を入れています。毎年8月に町内で開かれる「しもかわうどん祭り」は多い年で1万人以上を集客する下川の夏を代表するイベントです。2004年にそれまで町民向けだった「ふるさとまつり」から「うどん祭り」に名前を変えて、町外客の呼び込みを図ったことが始まり。
 2日間で延べ6900人が来場した2023年の第20回では下川のうどんに加え、愛知県名物のきしめん三重県名物の伊勢うどんなど道内外12店舗が出店し、名物のうどん早食い競争は毎年大歓声の中、熱戦が繰り広げられています。NPO法人しもかわ観光協会の高松峰成事務局長は「うどんは町の一大コンテンツ」と強調する。
 道新ウェブより